最近増加している「ゴミ屋敷」の原因のひとつに高齢者社会があります。特に独居老人が増え、しかも地域社会から孤立していること、さらには自分自身に関心が持てなくなる「セルフネグレクト」との関係が指摘されています。ゴミ屋敷の背景にある社会問題について探ってみました。
この記事で分かること
ゴミ屋敷が引き起こす問題
ゴミをいつ捨てるかは人それぞれ自由な判断に任されていますが、たまり続けると「ゴミ屋敷」になってしまいます。
ゴミ屋敷が引き起こす問題は
- ゴミ屋敷に住む人
- 周辺住民
のそれぞれに発生します。
ゴミ屋敷に住む人に発生する問題
ゴミがたまると不衛生になります。ゴキブリやハエなどの害虫が発生し、場合によってはネズミが住み着くこともあります。また、雑菌が繁殖し、食中毒を起こる可能性もあります。
さらに悪臭が発生し、室内に散乱したゴミを踏んで足をケガしたり、自然発火したりといった危険性もあります。
周辺住民に発生する問題
ゴミ屋敷の近くに住んでいる人は悪臭や害虫に悩まされます。ゴミ屋敷を「ゴミ捨て場」と思うのか不法投棄されることもあり、道路にまでゴミがあふれ出て通行の妨げになることもあります。
火災が発生したら延焼の危険性もあります。
ゴミ屋敷が生まれる背景にあるもの
ある清掃業者の調べによると、ゴミ屋敷の持ち主はほとんどがひとり暮らしの高齢者だということです。一方、最近ではひとり暮らしを始めた若者や離婚、災害などで精神的なダメージを受けた人が多いのだとか。その実情を詳しく見ていきましょう。
独居老人にゴミ屋敷が多い理由
高齢化
高齢になると体力や筋力が低下して、重いゴミを出すのが大変になります。その結果、自然とゴミがたまっていきます。
もったいない精神
高齢者は戦後のモノのない時代を経験しているために、「もったいない」という気持ちが強いのが特徴です。「まだ使える」「いつか使うかも知れない」という気持ちから、どんどんモノがたまっていきます。
テレビで紹介されているゴミ屋敷の住人の場合は、「ゴミとして捨ててあるモノでもまだ使えるから」と言って持ち帰っていました。このようにもったいない精神がゴミ屋敷を招く要因になっています。
認知症
本人は自覚していなくても認知症が進んでいて、ゴミを認識できない、ゴミ出しの日を忘れるといったことからゴミが増えていきます。また認知症の場合は同じものをいくつも買って来ることがあり、特に食べ物の場合は食べきれずに腐ってゴミとなっていきます。
気力の喪失
ひとり暮らしになると部屋を片付けなくても誰にも文句を言われないということや、きれいにする張り合いがないといったことから掃除をする気力がなくなっていきます。その結果、ゴミがたまっていきます。
若者や中高年がゴミ屋敷になる理由
家族と同居していたころは母親がゴミ出しや部屋の片付けをしてくれていたのに、ひとり暮らしを始めると何もかも自分でやらなければなりません。仕事の帰りが遅くなると疲れていて何もやる気が起きなくなり、ゴミ屋敷化していきます。
一方、中高年の場合は離婚やリストラ・失業、災害など精神的に大きなダメージを受けることがきっかけで片付ける気力を失っていき、ゴミ屋敷になっていくケースが見られます。
セルフネグレクトとゴミ屋敷の関係
ゴミ屋敷の背景には「セルフネグレクト」という問題があるといわれています。
セルフネグレクトとは
セルフネグレクトとは「自己放任」と呼ばれるもので、自分自身に関心がなくなることです。周囲の人との関係を拒み、人が自分のことをどう見ているかということにすら関心がなくなっていきます。
また、周囲の干渉を拒む特徴があるため、「自分のことは放っておいてほしい」と考えるようになります。その結果、ゴミがあふれ出るようになっても周囲の目を気にしなくなります。それが迷惑をかけているということにも気持ちが及ばなくなるのです。
セルフネグレクトは孤独死につながることも
ある調査では全国での孤独死は65歳以上がもっとも多く、東京都23区内だけでも毎年4000人もいると言われています。全国では年間2万人以上が孤独死しており、その8割以上がセルフネグレクトではないかと考えられています。
周囲とのかかわりを拒むためにご近所づきあいがなく、その家に人が住んでいるのかどうかすら近所の人が知らないという現実があります。
当然、ゴミ出しもしないためにゴミの中で亡くなっているというケースが見受けられます。
ゴミ屋敷化を防ぐことは孤独死の防止につながる
このようにゴミ屋敷が生まれる背景にはさまざまな問題が潜んでいます。また、ゴミ屋敷になる原因が1つではないことも解決の難しさを物語っています。一方で、ゴミ屋敷を防ぐことは孤独死の防止につながると考えられます。
ゴミ出しが大変になったら近所に相談を
高齢や身体的な障がい、妊娠などでゴミ出しが大変になったら、一度自治体に相談してみましょう。自治体によっては高齢者や障がい者などを対象に自宅までゴミの回収に来てくれるサービスを実施しています。ゴミ出しと同時に安否確認を行うところもあります。
それがない場合は町内会の役員さんに相談してみましょう。このように近所との関わりを持つことで、ゴミ屋敷や孤独死を防ぐことができます。
近所の集まりに誘ってあげる
ゴミ屋敷の防止は、近所の人のかかわりも必要です。
例えば人とのかかわりを避けると着るものや身だしなみに無頓着になっていきますが、誰かとかかわることで身だしなみに関心を持つようになります。また家に人を招くことで、「片付けなきゃ」という意識が芽生えます。
セルフネグレクトを防ぐためにも、近所の人はなるべくかかわりを持ってあげましょう。お茶会や老人クラブの集まりに誘ってあげると効果的です。すぐには来てくれなくても声をかけ続けると次第に変化していきます。
「おかずを作ったから食べて」と差し入れを持って行き、さりげなく家の様子を見るのもいい方法です。干渉し過ぎない程度にかかわってみてください。
ゴミ屋敷になると片付けの費用がかかる
ゴミ屋敷になってしまうと周囲に迷惑をかけるだけでなく、片付けにも高額な費用がかかります。自分でできない場合は自治体が行政代執行を行うことがありますが、そのときの費用は行政が立て替えてくれるものの結局は自分で支払わなければなりません。
費用面でも近所への迷惑をかけるという面でも、また自分自身が健康的な暮らしをする面でもゴミ屋敷を防ぐように心がけましょう。
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