長らく帰っていなかった実家が、いつの間にかゴミ屋敷になっていたというケースがあります。テレビでゴミ屋敷が問題になっているのを見たけれど、まさか親の家で起こっているとは……。
原因は高齢で重いものが持てないといった物理的な理由のほかに認知症が進んでいたということもあります。実家がゴミ屋敷にならないための対策と親の説得方法をご説明します。
この記事で分かること
実家の片付けは意外と難しい!
「自分の親なんだから子どもの言うことは聞いてくれるだろう」と思ったら大間違いです。実家の片付けほど難しいことはないと言われています。親はいくつになっても自分の方が立場が上で、子どもの意見は聞かないという姿勢を持っているからです。
実家の片付けが原因で起こるトラブル
実家の片付けを巡ってさまざまな問題が起こっています。
古い道具を使っていたので捨てようとしたら叱られた
これはよくあるトラブルです。
若い人から見れば省エネタイプの家電製品やさまざまな便利グッズの方がいいと考えがちですが、高齢者は少々不便でも使い慣れたものがいいと考えています。
その価値観の違いから、意見が対立してけんかに発展することがあります。
勝手に置き場所を変えたら叱られた
高齢者は毎日の生活パターンがほぼ決まっています。毎日、同じものを同じ場所に置くことが多いために、たまに帰ってきた子どもが勝手に置き場所を変えるのはトラブルの元になります。
好意で片付けたり、棚を取り付けたりする場合は、事前に説明をして相手が納得してからにしましょう。
勝手に処分してけんかになった
一番やってはいけないことは、「勝手に処分すること」です。
幼い子どもと一緒で周囲が見ればガラクタに思えるものでも、本人にとっては宝物ということがあります。
処分する場合は「この部屋をもう少し広くすると便利だよ。」「これはもう使う機会がなさそうだから処分してもいい?」と聞いてみましょう。
処分に抵抗がある場合は「これ、私がもらってもいいかな?」と許可を得てから持ち帰って、処分するとスムーズに片付きます。
親子けんかから親子断絶につながるケースも
たとえ親子であってもしばらく顔を合わせていないと、考え方に相違が生まれています。それを理解せずに自分の考えを押しつけると親は反発してしまいます。
特に高齢者は頑固になっているので、「おまえがそんなヤツだとは思わなかった。もう出ていけ」「帰ってくるな!」と激しい口調で言われる可能性があります。
売り言葉に買い言葉でけんかになり、親子断絶ということもあり得るので注意しましょう。
実家が散らかり始めたら早めに片付けを手伝おう
離れて暮らしていると普段の生活がなかなか見えないものですが、帰省したときに以前よりも散らかっていたらそれとなく片付けを手伝ってあげましょう。
ゴミ屋敷になる前のサイン
次のような兆候が見られたら、ゴミ屋敷に近づいている可能性があります。
- 冷蔵庫に賞味期限切れの食材がたくさん入っている
- 古い新聞や雑誌がたまったまま
- 買い物をした品物を袋から出さずにそのままにしている
- まだ買い置きがあるのにいくつも同じものを買ってきている
- 脱いだ衣類があちこちに放置されている
- 空き缶や空きびんなどがごみに出さずにたまっている
- 床にモノが無造作に置いてある
- モノが散らかっている
- 長らく掃除をした様子がない
これらは判断能力や体力・気力の低下を物語っています。
会話をしてみておかしなところがないかチェックしてみましょう。認知症の兆候がある場合はガスの火の消し忘れや家の鍵のかけ忘れなど危険を招く場合があります。
実家の様子を見て、不安な場合は自治体や介護関係のサービスなどの相談をしてみましょう。
実家の片付けは安全を最優先で
子どもは「すっきりと片付いた家でゆっくり暮らしてほしい」と望んでいますが、親は「必要なものがすぐに手が届く暮らしがしたい」と考えています。
このように親子の価値観や目指すところが異なると、片付けを始めても意見がかみ合いません。子どもがせっかく片付けたのに親が元の場所に戻してしまうということもよく起こります。
片付けに関しては共通のゴールや目的を決めましょう。親子で話し合って、「床にモノが散乱しているとつまずいて転ぶから危ないよ」「災害が起こったときにすぐに逃げられないよ」など安全のために片付けるんだという目的を理解してもらいましょう。
安全で健康的な暮らしを作ろう
いくらすっきり片付いていても、ほしいモノを取るために踏み台を使うのは高齢者には危険が伴います。結局、手近なところにモノを置くようになってしまいます。
実家を片付ける場合は、親が安全で健康的に暮らせることを最優先にしてあげましょう。
安全に配慮した片付け方法
重いモノを持ち上げたり、上げ下ろししたりするのは高齢者には負担になります。そこで押入れから簡単に出し入れできるようにキャスターがついたケースを使ってみましょう。また、キャスター付きのキッチンワゴンをすすめるのもいい方法です。
ほかには
- 家の中の段差を少なくする
- 収納家具は腰までの高さにする
- 帰ってきたらすぐに片付けられるようにハンガーラックなどを備える
などの工夫をしてあげてください。
災害時にすぐに逃げられるように
親を説得する場合も安全面を強調すると、スムーズにいきます。
- 家の出入り口にモノが置いてあると災害時に逃げ出せなくなる
- 高いところにモノを置いていると地震で落ちてくる
- 家の外にモノを出しっぱなしにしていると盗難の被害に遭う
など「親の安全を考えている」ことを全面に出して説得してみましょう。
親にも意地がある
親が高齢になると、若い人の意見の方が正論ということが増えてきます。しかし、特にわが子に対しては親はいつまでも自分が偉いと考えてしまいがちです。そこで無理やり子どもが意見を主張すると真っ向から対立してしまいます。
親のプライベートスペースを守ってあげよう
たとえ家族であっても「ここは触れないで」という部分があります。
特に何かを隠し持っているわけではありませんが、「この引き出しの中はさわらないで」「この部屋は自分の好きなようにさせて」といった意識があるのです。
その気持ちを尊重してあげましょう。
片付けは玄関や外まわりから
親のプライベートなスペースを尊重するためにも、片付けはそこから遠いところから始めます。
まずは外まわりや玄関まわりを片付けましょう。きれいになっていく様子や子どもが一生懸命にやってくれる姿を見て親の気持ちが和らいでいきます。
「ここが不便で困っていたから直して」と言ってくることもあります。そうなればかなり心を開いている証しです。「ついでにここも片付けようか」と言ってみましょう。ただし、決して無理強いはしないことが大切です。
親のプライドを尊重する
忙しい人にとっては実家で何日も片付け作業をするのが難しいという場合があります。そのため、親の気持ちを無視してとにかくどんどん処分してしまいがちです。
しかし、それでは親の気持ちは置き去りになってしまいます。
特に次のような言葉使いには注意しましょう。
- どうせ使わないでしょう?
- これ、もういらないよね(と一方的に決めつける)
- こんな古いモノ、まだ持っていたの?
- 同じモノをいくつも買って。最近、ちょっとボケてきたんじゃない?
- 忙しいんだから、同じことを何度もさせないでよ
親が高齢になると何もかもが思うようにいかなくなりますが、「子どもには迷惑をかけたくない」と思っています。それなのに「片付けで何度も来るのは迷惑だ」と言わんばかりの態度を見せると、親は落ち込んでしまいます。
思いやりを持って接してあげましょう。そして安否確認を兼ねてなるべくこまめに顔を出してあげてください。それがゴミ屋敷を防ぐことにつながります。
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