
「ごみ出しは回収日の朝8時までに出してください」という自治体が多いのではないでしょうか。出勤前に急いでごみ袋を持ち出すという姿が各地で見られますが、自治体によっては夜間にごみ回収を行っているところがあります。その目的と効果は?探ってみました。
この記事で分かること
夜間にごみ回収をしている自治体
都市部では飲食店などから出るごみは民間業者が夜間回収をしているところがありますが、一般市民の家庭ごみを自治体が夜間に回収するのは珍しいことです。
ところが福岡県福岡市ではかなり前から夜間収集を行っています。
福岡市が夜間にごみ回収を行っている理由
福岡市のホームページによると夜間回収の歴史は古く、明治時代にまでさかのぼります。
明治22年に市制が施行されて以来、民間業者が回収
福岡市は明治22年に市制が施行されますが、ごみ回収は行政ではなく民間に委託していました。最初は荷車による人力だったのが馬車、三輪車、トラックと変遷し、現在のごみ収集車での回収になっています。
ごみは農家の肥料だった
明治時代から昭和初期にかけての生ごみは農家にとっては野菜の肥料や家畜の飼料になる貴重なものでした。そのため民間に委託すると言っても特に「ごみ回収業者」が集めるのではなく、農家の人が早朝に近くの家庭の生ごみを回収していたそうです。
昼間ごみを回収すると本業に差し支えるからという理由があったのですね。
戦後は交通渋滞を避けるために夜間に回収
戦後もごみ回収の民間委託は続きますが、戦前のような馬車ではなく自動車を使うようになります。すると闇夜でも回収が可能となりました。またどんどん人口が増加する福岡市内では昼間は交通渋滞が発生しますが、夜間なら交通を妨げることなく効率よくごみを回収できるということで、自治体が回収を行うようになった現在でも夜間収集が続いています。
ごみを夜間に回収するメリット
ごみは朝出すものと思っている人にとって夜間に出すというのは不思議な気がしますが、実際に福岡市内に住む人にうかがうとさまざまなメリットがあることがわかります。
市民が感じるメリット
ごみを出す側の市民が感じるメリットとしては、次のようなものがあります。
- 朝、バタバタしなくても済む
- 生ごみのにおいが部屋に充満しないので助かる
- カラスによるごみの散乱被害が減る
- 夜間に回収車が走るので防犯効果がある
確かに朝ごみ出しをすると、出勤前は忙しいし、出かけるために着替えた洋服が汚れないかという心配があります。何よりもカラスの被害が減るのはうれしいことですね。
また、夜間はごみ袋の中が見えにくいという安心感もあるようです。
なお、福岡市のごみ回収はごみ集積所やごみステーションにだすのではなく、各家庭の玄関先に出しておくという方法です。戸別回収してくれるので、防犯効果がより高くなるのでしょう。
自治体のメリット
ごみ回収する自治体側としてもカラスの被害で悩まなくていいというメリットがあります。
また、交通渋滞がないので作業がはかどるというメリットもあります。
ごみを夜間に回収するデメリット
住民へのアンケート結果では、夜間のごみ回収の満足度は「97.3%」と高くなっています。多くの住民が喜んでいるのですが、自治体側としては次のようなデメリットを抱えています。
- 作業員の深夜料金がかかる
- 回収車の音や作業員の声に対して苦情が寄せられる
福岡市の夜間ごみ回収費用は年間6億円!?
ある調査では福岡市は夜間回収することで人件費が6億円もかかると計算されています。他の自治体のように朝からの回収に切り替えるだけで深夜手当がなくなり、経費が削減できます。
しかし、「住民の住みやすさ」を最優先して、今後も夜間回収を継続するということです。
音を抑える工夫も
もうひとつの問題点である作業員の声かけ。これはごみ回収をする際には必要不可欠なものです。しかし、細い路地に車が入っていくときなどの「オーライ」「ストップ」のかけ声がうるさいと苦情になることがあるのだとか。
確かに赤ちゃんがいる家庭などでは、夜は静かにしてほしいと思いますよね。
そこで福岡市では音や声の対策として車の後ろに「集音マイク」を取り付けて運転手とやりとりをしているそうです。これなら大きな声を出さなくても、お互いに連絡が取れますね。
分別方法もシンプル
福岡市は他地区からの転入者が多いところです。そこで分別方法を「燃えるごみ」「燃えないごみ」「空きびん・ペットボトル」「粗大ごみ」の4種類にしています。
空きびんはすべて1つにしていいし、空き缶やガラスの破片、割れた食器、金属類、スプレー缶などはすべて「燃えないごみ」として指定のごみ袋に入れて出すだけです。市では回収した燃えないごみを資源化センターで分別しています。
戸別回収するのでごみ出しが大変な高齢者世帯や障がい者、妊娠中の人にもやさしいし、防犯面でのメリットもあります。
経費はかかりますが、カラスの被害で悩む地域などでも導入されるといいですね。
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